UFLPAコンプライアンスのために企業が取るべき7つの重要ステップ

6月5日、Z2Dataはウェビナーを開催し、法律専門家がUFLPA(ウイグル強制労働防止法)および拘留対応のための最適な戦略について解説しました。ここでは、インポーターや他企業がUFLPAコンプライアンスを強化するための有用なアドバイスをまとめています。

UFLPAコンプライアンスのために企業が取るべき7つの重要ステップ

2022年6月21日に施行されたウイグル強制労働防止法(UFLPA)の発効から、まもなく2年が経過します。この法律は、中国新疆ウイグル自治区(XUAR)における広範かつ体系的な強制労働慣行について中国企業の責任を問うと同時に、米国メーカーや輸入業者がこれら企業との取引を控えるよう抑止することを目的として制定されました。2024年5月1日現在、法律の執行機関である税関・国境警備局(CBP)は、UFLPAのもとで8,000件を超える貨物を押収しており、その総額は33億ドルを上回っています。

6月5日、Z2Dataはウェビナーを開催し、「CBP押収」発生時に有効なUFLPA対応パッケージの構築に焦点を当てて解説しました。本ウェビナーでは、コンプライアンス対応や押収・関連課題に豊富な経験を持つ2名の専門家が登壇しました。

UFLPA Compliance
  • Lindsay Wardlaw氏(元国際通商弁護士、現Amalie Trade Compliance Consultingコンサルタント)
  • Mary Mikhaeel氏(Miller & Chevalierで強制労働・人権課題を専門とするシニアアソシエイト)

以下に、イベント内で登壇者が示した7つの重要なUFLPAコンプライアンス対策をまとめました。

1.UFLPA押収リスクが最も高い製品の認識

UFLPAコンプライアンス体制を強化したい企業は、CBPによる押収リスクが高い製品・原材料を把握する必要があります。Mikhaeel氏は「多くの企業がまず行っているのは、自社のハイリスク製品やサプライヤを特定するためのプロセスを構築することです」と述べています。こうしたハイリスク品目を明確にする有効なリソースは数多く存在します。

「多くの企業がまず行っているのは、自社のハイリスク製品やサプライヤを特定するためのプロセスを構築することです。」

UFLPAの施行当初、国土安全保障省(DHS)と強制労働取締タスクフォース(FLETF)は、労働省が作成する児童労働・強制労働による生産品リストを活用しました。このリストは新疆での強制労働と結び付けられた10品目(綿花・衣類・電子機器・ポリシリコンなど)を含み、DHSの重点指定や広範な執行方針に大きな影響を及ぼしています。

加えて、企業や関係者はCBPのUFLPA統計ダッシュボードを自由に利用できます。このツールでは、CBPがUFLPAで押収した貨物の最新データを、月別・年別・業界別・原産国別に可視化しています(実際の押収の多くはマレーシア、ベトナムなど第三国経由)。さらに、ダッシュボード記載産業における押収品目例を示すData Dictionaryと併用することで、最もリスクの高い製品分野がおのずと浮き彫りになります。

また、法律への積極的な予防姿勢を志向する企業は、新疆での強制労働慣行に関する調査報道の継続的な発表にも注意を払うべきです。例えば、シェフィールド大学ヘレナ・ケネディ・センターやHuman Rights Watchをはじめとした学術機関・NGOが、新疆での強制労働と新たな関連企業を特定する調査報告を相次いで公開しています。

また、法律への積極的な予防姿勢を志向する企業は、新疆での強制労働慣行に関する調査報道の継続的な発表にも注意を払うべきです。

こうした調査は単なる研究成果や名誉獲得の手段にとどまらず、FLETFがUFLPAの実施を進化させ、対象範囲を拡張するための基幹リソースとなっています。そのため、これら調査結果は、業界・製品・企業が今後どのような政府機関の監視対象となるかを占う「予兆」として、ビジネス側にとって価値ある警告ともなり得るのです。

こうした調査結果は、業界・製品・企業が今後どのような政府機関の監視対象となるかを占う「予兆」として、ビジネス側にとって価値ある警告ともなり得るのです。

2.サプライヤ契約条項の拡張・強化

UFLPAの対象業界拡大や2024年の押収件数大幅増加を踏まえ、サプライヤとの契約内容見直しは喫緊の課題です。米国メーカー・輸入業者は、サプライヤの強制労働発覚時に「正当な理由による契約解除」を可能とする条項を導入すると有効です。こうした予防措置により、自社製品が押収された場合の交渉力と法的立場が確保できます。

Wardlaw氏は、強制労働関連で押収・疑いが生じた際、仕入れた製品の「無償返送」を可能にする契約見直しを提案します。「該当ケースで柔軟に対応できる条項を加え、取引先に本件が重要事項であることを通知すべきです」と述べ、さらにインポーターを守る追加条項(例:強制労働関連の発覚を“重大な契約違反”とし、“違約金や損害なく解除可能”とする条文)の導入も例示しています。

Wardlaw氏は、強制労働関連で押収・疑いが生じた際、仕入れた製品の「無償返送」を可能にする契約見直しを提案します。

3.サプライチェーン・マッピングの実施

UFLPAコンプライアンスの強化施策として、サプライチェーン可視化の深化ほど強力なものはありません。自社の直接サプライヤから下層階層(サブティア)・原材料まで包括的に可視化することで、新疆やUFLPAエンティティリスト上の中国企業68社への接点有無を明確にできます。

自社の直接サプライヤから下層階層・原材料まで包括的に可視化することで、新疆やUFLPAエンティティリスト上中国企業68社への接点有無を明確にできます。

ただし、グローバルに複数国・多層のサプライヤが連なるサプライチェーン構造では、可視化・マッピングは膨大かつ困難な作業です。米国メーカー・輸入業者が自力で直接サプライヤへのヒアリングやアンケートを行い、手動で全体像を把握しようとするケースも見受けられます。

一方、技術力を活用した代替戦略も有効です。たとえばサプライチェーン・リスク管理(SCRM)プラットフォームを導入すれば、複数のデータベースや公開情報などからサプライチェーン全体の情報を統合し、製品・部品の製造拠点や原産国まで遡った可視化が短期間で実現できます。このSCRMツールにより、強制労働リスクの特定・迅速対応はもとより、突然のCBP押収による混乱損失を回避できる可能性が高まります。

SCRMソリューションを活用すれば、サプライチェーン全体像をより短期間で包括的に可視化し、潜在的な強制労働リスクの特定とCBP押収の混乱回避につなげることが可能です。

いずれの場合でも、マッピング精度と思考の細密さが最も重要です。「サプライチェーン上のすべての組織・トレーダーや、各工程で一時保管された場所などまで正確に把握することが鍵です」とMikhaeel氏は述べています。こうした徹底したマッピングにより、「自社プロダクトで最大リスクの部品がどこにあるか全体感がつかめます」。

4.模擬押収(モック・ディテンション)の実施

直接サプライヤやサブティアのUFLPA押収対応力を事前にテストしたい企業には、「模擬押収(モック・ディテンション)」、つまりトレーサビリティ監査の実施が推奨されます。模擬押収では、インポーターがサプライヤに連絡し、押収時に必要となる全ドキュメント(請求書、取引記録、BOM、原産地証明書等)をまとめさせます。これは対応パッケージを構築しリリース判定を得る際に用いる書類一式にあたります。また、模擬押収はサプライチェーン全体の即時可視化にもつながります。その結果、製造工程のどこかに新疆またはUFLPAエンティティリスト掲載企業との接点がないかを確認できます。

押収時に準備すべき書類には、請求書、取引記録、BOM(部品表)、原産地証明書などがあります。

模擬押収=トレーサビリティ監査のメリットは、XUAR産強制労働リスクの評価にとどまりません。Mikhaeel氏によれば、この演習により、30日以内のUFLPA対応パッケージ構築が本当に可能か、実際の業務手順の有効性まで検証できます。「必要書類の質・充実度を高めるため、どの部分を強化すべきか?」「そもそもサプライヤ側が協力・コミュニケーションする意思を持っているのか?」といった現状のベンチマーク確認に役立ちます。監査の結果から、取引先サプライヤに新たに導入させるべき記録・ドキュメント管理体制が明確化し、サプライチェーン全体のUFLPAコンプライアンス底上げが期待できます。

模擬押収は、サプライヤの対応能力・現状把握のための有用なベンチマークとなります。

5.CBPが注目する第三国の特定

2024年に押収案件が急拡大するなかで、CBP(UFLPAダッシュボード)の押収統計で特に注目すべきは「原産国別」のデータです。表面上は中国が押収元トップ3に入っておらず、実際の押収貨物の多くが中国以外(マレーシア、ベトナム、タイ)から出荷されているのが分かります。これら3か国が貨物価値ベースで約90%ものシェアを占めています。

実際、中国は押収国の上位3位に入っていません。マレーシア・ベトナム・タイが中国を上回る押収対象国となっており、3か国で全体の約90%(貨物価値ベース)を占めます。

この統計が示唆するのは、UFLPAコンプライアンス強化を目指す輸入業者にとって極めて重要な実態です。実は新疆由来などの強制労働品の多くは、中国から直接輸入されず、第三国で加工や追加工程を経て米国に流入しています。

ソーラーパネル・電子機器・集積回路など複雑な製品のグローバル・サプライチェーンでは、原産国がマレーシア・ベトナムであっても、その前段階の部材や原料が中国・新疆由来であることも珍しくありません。「第三国経由品は非常に重要」とMikhaeel氏は指摘し、自社対象製品について「CBPのターゲットとなる第三国はどこかを調査する必要がある」と提言しています。

6.代替調達先の確保

CBP押収リスクの低減を目的とした根本的な予防対策の一つが、UFLPA施行以前から存在する「SCRM戦略」の一環である代替調達(デュアルソーシング)です。これは特定部材やサービス、原材料について、複数のサプライヤを確保することで、規制強化や貿易摩擦などのサプライヤ断絶リスクに備える実践的なレジリエンス施策です。近年のサプライチェーン業界全体でも、デュアルソーシングを含む分散調達やChina Plus One(チャイナ・プラス・ワン)、ニアショアリング、オンショアリング、リスク分散(デリスキング)が重要トレンドとなっており、戦略調達ガイドラインとして不可避の要素となっています。

デュアルソーシングは、規制・貿易摩擦などの激変にも柔軟に対応できるレジリエントなサプライチェーン構築の中核となります。

UFLPAコンプライアンスの観点からは、代替調達先の確保は押収被害の最小化に直結します。仮にある貨物がXUAR由来疑いでCBPに止められても、デュアルソーシングが確立されていれば、その商品を再輸出し、すぐに「クリーンな」代替サプライヤから調達を切り替えることが可能です。過去記事でも触れた通り、単一サプライヤ依存よりもこの柔軟性は格段に有利です。

CBPに押収された際も、デュアルソーシングを確立していれば別の「クリーンな」代替サプライヤから即座に調達を切り替えられます。

また、サプライヤが監査や模擬押収、その他のUFLPA施策への協力に消極的・非協力的な場合には、Wardlaw氏は「クリーンな代替調達先の確保が合理的」とアドバイスしています。

7.業界団体活用によるサプライヤ責任追及の強化

主要業界では、市場規模やグローバルな影響力をもつ強力な業界団体が存在し、業界全体の標準化や法整備、イノベーション推進の役割も担います。電子部品業界ならECIA(Electronic Component Industry Association)、半導体ではSIA(Semiconductor Industry Association)などがその例です。

こうした団体は必ずしもUFLPAの遵守強化に直結するものではないように見えますが、コンプライアンス強化の重要な推進役となり得ます。何十億ドル規模のマーケットを代表する団体ゆえ、その会員企業が取引用のサプライヤや関係先に対し強い影響力をもつからです。

業界団体は必ずしもUFLPA遵守推進の資産に見えませんが、実際にはトレードコンプライアンス強化の重要な役割を担います。

UFLPAコンプライアンスを全関係者一丸となって推進するため、業界団体の規模的な影響力をサプライヤやサブティアに行使することも重要な手段となります。「業界団体の規模を背景に、サプライヤの透明性・説明責任を引き上げるべく協力を求めることができます」とWardlaw氏は述べています。こうした連帯感と集団的な経済力をもった団体による呼びかけは、個別のアンケートや電話連絡では届きにくいメッセージをサプライヤ側に伝え、長期的な行動変容を促すことが可能です。「強制労働問題の改善には業界一体となってサプライヤに行動を促すことが近道です」と語ります。

サプライヤ・サブティアのUFLPAコンプライアンス協力を促すには、業界団体を活用して適度なプレッシャーをかけることも有効です。

Z2DataのUFLPAウェビナーでさらに深く理解

Z2Dataのサプライチェーン・リスク管理ソリューションを用いたデューデリジェンス構築をさらに詳しく知りたい方は、製品エキスパートとの1on1デモを見ることで、初めの一歩を踏み出すことができます。

また、Mikhaeel氏・Wardlaw氏・Z2DataシニアカスタマーサクセスマネージャーのOliver DeThierが登壇したオリジナルウェビナーの詳細をご覧になりたい場合は、ウェビナーリソースページもご活用ください。プレゼンテーションでは下記トピックを取り上げています:

  • CBPによる貨物押収の主なトリガー
  • 電子部品業界における直近の規制動向
  • デューデリジェンスパッケージ構築のベストプラクティス