トランプ政権による半導体への関税提案

トランプ政権が提案する半導体への関税は、米国外で製造されたチップに依存する米国産業全体に大きな影響をもたらす可能性があります。Z2Dataの独自データがその詳細を可視化します。

トランプ政権による半導体への関税提案

現在判明していること

2月18日(火)、トランプ大統領は、外国車、医薬品、半導体を含む主要な製品カテゴリーに対し「おおよそ25%」の関税を課すと発表しました。記者会見でトランプ大統領は、この関税率は今後変更される可能性があり、「1年を通じて非常に大幅に高くなる可能性が高い」とも述べました。

大統領の発表内容に基づけば、現時点で新たな関税は4月中に発効される予定となっています。自動車、医薬品、半導体の輸入品に対する新たな関税措置は、特定の国家や複数の国を標的とするものではありません。これら3カテゴリーの全ての製品が米国に輸入される場合、25%の関税が適用されます。

トランプ政権発足以降の関税情勢の概観

1月20日にトランプ大統領が就任してから6週間で、同政権は複数の国・製品カテゴリーに対し、一連の関税を発表・警告・施行してきました。

  • 2月1日:トランプ大統領は、中国、カナダ、メキシコへの関税を課す複数の大統領令を発出しました。その内容によれば、カナダおよびメキシコからの大半の製品については2月4日から25%の関税対象となります。加えて、中国からの全製品には既存の障壁に加え10%の関税が課されます。これら3カ国への関税内容は、2月1日付のホワイトハウスのメモに記載されています。
  • 2月3日:カナダ・メキシコへの関税公告から2日後、両国と1か月間の関税措置延期で合意。メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は、米墨国境に1万人の追加兵力を配備し、違法薬物および移民対策で協力することを約束しました。カナダのジャスティン・トルドー首相も「カナダ・米国合同ストライクフォース」創設を発表し、国境問題に対応する新たなインテリジェンス指令にも言及しました。
  • 2月4日:中国製全製品への10%関税が発効。大統領令では「合成オピオイドの継続的流入」が「国民の健康・社会・家庭に甚大な影響を与えている」とし、中国共産党は「PRC(中国)の化学企業にフェンタニルや関連前駆体化学物質の対米輸出を奨励」してきたと説明されています。
  • 2月10日:2月第2週も関税攻勢が続き、大統領は鉄鋼製品全般に25%、アルミニウム全般に25%の関税を課す大統領令を発出。いずれも2025年3月12日発効です。
  • 2月13日:ホワイトハウスはメモランダムで公正で互恵的な貿易条件の必要性を主張し、「Fair and Reciprocal Plan(公正かつ互恵的な計画)」を導入。米国は各国から自国製品の関税水準に応じて、関税水準の調整・再構築を図る意向を表明しました。
  • 2月18日:大統領は記者会見で、全ての外国自動車、半導体、医薬品への25%関税導入を宣言。
  • 2月26日:現トランプ政権で初の閣議にて、欧州連合(EU)向け関税案を示唆。「自動車およびその他すべての商品」に25%の関税を「近日発表」すると説明し、EUが米国へ何百億ドルもの製品を輸出し、米国からの輸入が極めて少ない状況を背景に挙げました。欧州委員会のデータによれば、2023年の米国に対する貿易黒字は約1,600億ドルに達しています。
  • 3月4日:3月4日深夜(米東部時間)、トランプ政権は新たな関税措置を発動。カナダ・メキシコからのほとんどの製品に25%の関税(1か月停止されていた関税の再発動)と中国製品への追加10%関税を含みます。中国・カナダ・メキシコは米国最大の貿易相手国であり、米国輸入全体の約45%を占めます。当日朝、カナダと中国は報復関税を発動しました。

25%半導体関税の潜在的な影響

米国は毎年約1,400億ドル分の電子部品を輸入しています(商務省データ)。そのうち約250億ドル(総額の約18%)は半導体です。もし半導体輸入品に対して25%の関税が発効した場合、輸入者側には追加で合計約63.5億ドルのコスト負担が生じます。

多くの報道機関が指摘するように、このコスト増加は、半導体を輸入する全てのメーカー(自動車メーカー、電子機器メーカー、家電企業、医療機器企業など)にとって、製品価格の値上げにつながる可能性が極めて高いです。

技術的には、各企業はサプライチェーンを見直して米国内メーカーから半導体を調達することも考えられます。これは自国半導体産業の活性化や、世界の半導体市場環境の変革(バイデン前大統領とCHIPS and Science Actが掲げた政治的主目標の一つ)に資するものです。

しかし、米国には未だ十分な知見・製造拠点・高度な半導体生態系がなく、完全な自給体制を築くには至っていません。現状、米国ファブが担う半導体全体の製造能力は世界の約10%(先端チップ分野ではさらに小さい割合)であり、TSMCの3nmチップなど最先端半導体の大半は台湾で製造されています。

TSMCは最近、アリゾナの工場で4nmチップの量産を始めたものの、米国内で生産される最先端ウェハはこの工場一例のみです。TSMCによる650億ドル規模の複数工場投資の遅延も、米国内で先端製造を急速に立ち上げる難しさを示しています。そのため、多くの米国企業は依然として海外メーカーとパートナーシップを結び、半導体製造プロセスの一部または全てを国外に依存する必要があります。関税の仕組み上、たとえ一部を米国内で製造しても最終的には25%課税対象となる場合もあります。

Z2Data分析手法

本レポートのデータは、まずZ2Dataデータベース内の半導体部品のうち、原産国(COO:Country of Origin)情報が利用可能な全件を抽出することから始めました。次に、米国以外をCOOとする半導体部品のみを絞り込み、これらが25%関税対象となる潜在候補です。比較のため、COOが米国である全ての半導体も調査しました。

さらに、米国以外をCOOとする各部品を商品分類ごとに分解し、影響が最も大きい半導体部品カテゴリ上位5分類を選出して、トランプ政権の新規関税案がどのような影響を及ぼしうるか分析しています。

影響を受ける部品数合計

Z2Dataの半導体部品全データに基づく分析によると、約280万点の半導体部品が25%関税の影響を受ける可能性があります。また中国・カナダ・メキシコを対象とした(すでに発動・提案された)関税の影響を受ける半導体数も調査し、今回の大規模かつ包括的な関税措置の規模感を示しました。

  • 米国以外COO半導体:280万点
  • 米国COO半導体:11万5,000点
  • 中国対象関税適用半導体:77万点
  • メキシコ対象関税適用半導体:2万点
  • カナダ対象関税適用半導体:100点

重要ポイント

グローバル半導体関税の影響を考察する際、押さえておくべきポイントは主に3つあります。

第一に、トランプ政権が初めての6週間のうちに関税措置を交渉ツールとして積極的に活用し、海外に譲歩を引き出すレバレッジとして活用してきたことです。発令される大統領令や覚書・宣言が、いつ・実際に執行されるかは予断を許しません。

第二に、これらの関税の最終的な狙いの1つは、TSMCやサムスンなど世界有数の半導体メーカーに米国内生産を拡大させる圧力をかけ、米国自身の半導体製造能力強化、失った市場シェアの回復を長期的に目指す戦略であることです。

第三に、こうした戦略目標が実現するには数年以上かかる場合もあります。そして目先・中期的には、包括的な半導体関税の導入は米国メーカー数千社のコスト増加につながります。多くの企業は、現状では国内サプライヤへのシフトが容易ではなく、実際に代替先が存在しないケースも多数あるため、これら関税の影響はサプライチェーンを通じて広範囲のビジネス・消費者にも波及します。

Z2Dataで関税リスク部品を可視化

新政権による関税政策が次々と発表・提案・施行される中、貿易コンプライアンスのリスク・変動性は近年で最も高まっています。こうした慢性的な不確実性はメーカーにさらなるリスクをもたらし、自社の脆弱性を把握したい企業にはサプライチェーンの最大限の可視化が不可欠です。

Z2Dataでは、部品の出所をパート-サイトマッピングなどの機能で可視化し、BOM(部品表)を活用して全世界のメーカー・製造拠点と部品をつなぐことが可能です。加えて、Z2Dataの多彩な機能群は部品の原産国(COO)特定や各国依存度の明確かつ実用的なインサイト取得をサポートします。

自社の部品への影響が心配ですか? 今すぐZ2Dataの専門家にご相談ください—製品・部品に応じたリスクアセスメントをご案内します。