フォーエバーケミカル・PFASの過去・現在・未来
- PFAS(ペルフルオロアルキル・ポリフルオロアルキル物質)は、その極めて高い安定性と分解されにくさから「フォーエバーケミカル(永久化学物質)」として知られています。
- フォーエバーケミカルは、耐水性ジャケットやノンスティック加工フライパン、電子機器コーティングなど独自性に富んだ特性により、様々な産業用途で活用されています。
- 環境中での高い残留性、長い半減期、人体内での蓄積などが健康や環境への影響に関する懸念を生んでいます。
- フォーエバーケミカルは、内分泌系の乱れ、免疫機能の抑制、その他人体へのさまざまな健康被害を引き起こすことが判明しています。
- バイデン政権は、調査・規制・クリーンアップへの資金提供を通じてPFAS汚染への対策を進めています。
最新の推定によると、商業生産されている化学物質・混合物は合計で約35万種にも及び、私たちは様々な形でそれらと関わっています。これらの化学物質は家具や衣服、調理器具、化粧品、電子機器など、日常のあらゆる製品に使用されています。その多くは人間や野生動物、自然環境に対し重大なリスクをもたらすものではありませんが、中には深刻な環境破壊や劣化を引き起こし注目を集める化合物も存在します。
では、フォーエバーケミカルはこの中でどのような位置づけなのでしょうか。

フォーエバーケミカルとは
まずは技術的な名称であるPFASについて見ていきましょう。PFASは「ペルフルオロアルキル・ポリフルオロアルキル物質」の略称です。
PFASは9,000種以上の高度にフッ素化された物質からなる大きな化学ファミリーで、その共通点は炭素原子とフッ素原子が結合していることです。この炭素-フッ素結合はPFASに極めて高い熱的・化学的安定性をもたらし、高温や分解にも耐性があることを意味します。また、水や油、汚れも強力に弾く性質を持っています。

PFASが家庭用製品で使われている例
PFASが持つ独自で有利な特性の組み合わせは、さまざまな製品や用途に広く利用されてきました。防水ジャケットやノンスティックフライパン、日焼け止め、電子機器用コーティングなどがその一例です。言い換えれば、PFASは私たちの日常生活に常に存在しながらも目に見えない存在です。衣服や調理器具、化粧品など、私たちの暮らしを支える利便性と密接に結びついています。大半の人々はこうした化学物質について意識することはほとんどありませんが、PFASは現代の効率的な生活を支えています。
PFASがフォーエバーケミカルと呼ばれる理由
フォーエバーケミカルの特性の多くは、製品面では利点である一方、その性質が逆に複雑な問題を生み出しています。PFASの炭素-フッ素結合は世界でも最も強力な化学結合の一つであるため、これらの物質は「フォーエバーケミカル」と呼ばれるようになりました。
その呼称はまさにふさわしいものです。
フォーエバーケミカルの多くは土壌で1,000年以上、水中で40年以上の半減期を持ちます(半減期とは、特定の媒体中で物質の量が半分になるまでの期間です)。さらに問題となるのは、PFASの体内濃度が半減するまでに約4年かかるという点です。参考として、EUによる「非常に持続的」化学物質の基準は、土壌で180日、水中で60日の半減期とされています。つまりPFAS群は、生物を含むほぼすべての媒体で異常な持続性を示します。
このような異例の持続性がどんな影響を及ぼすのか、科学者や研究者たちは過去数十年かけて解明を進めてきました。フォーエバーケミカルの分解されにくさは環境や野生生物、そして人間の長期的な健康にどのような意味を持つのでしょうか。
フォーエバーケミカルがあらゆる製品に使われるようになった経緯
現在存在するPFASは数千種にも上りますが、歴史的に最も広く使用されてきたのはパーフルオロオクタン酸(PFOA)およびパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)です。
その他にPFNA、PFDA、PFOS、PFBSなども広く使用されています。PFOSおよびPFOAはそれぞれ炭素原子8個を持つ「ロングチェーン」PFASで、ほぼすべてがフッ素原子と結合しています。20世紀にメーカーや化学会社の科学者が実験を行うまでは、炭素-フッ素結合はきわめて稀なものでしたが、現在では世界中に拡散しています。
現在のような普及が見られるのはわずか75年ほど前からです。最初のPFAS化合物であるポリテトラフルオロエチレンは、1938年、デュポン社のジャクソン研究所(米ニュージャージー州ディープウォーター)で合成されました。その後、8年にわたる研究開発を経て、非粘着性・耐熱性樹脂「テフロン(PTFE)」の形で世に登場しました。さらに1950年代初頭、3M社の科学者が航空機用燃料ホース用の新しいゴムを開発中に、最終的に家具やカーペットなどの撥水・防汚仕上げ「スコッチガード」の原料となるPFASも偶然発見されています。
フォーエバーケミカルが人気を博した理由
これら画期的な製品が家庭名となり、アメリカを代表するブランドとして広まったことで、PFASは産業界全体に急速に拡大していきました。フルオロカーボンが既存製品の性能・商業性を向上させることに魅力を感じた企業は、さまざまな人気商品にPFASを活用し始めました。耐熱性・耐水性・防汚性・劣化耐性により、必要不可欠な製品のコーティング用途で幅広く利用されたのです。履物、衣服、アウトドア用品、食品包装、化粧品なども最終的にはフォーエバーケミカルで加工されるようになりました。

PFASの用途は一般消費者向け製品だけでなく、1960年代には米軍と3M社が連携し、特殊な消火剤AFFF(Aqueous Film-Forming Foam:水性フィルム形成泡)にもPFASが活用されました。フルオロカーボンの特性を活かし燃料火災の再燃防止に役立つこれら消火剤は、空港、消防署、軍事施設、大型燃料保管施設など世界中の緊急インフラの一部となりました。
デュポン・3Mによるフォーエバーケミカル量産化への寄与
フォーエバーケミカルの初期の生産をリードしたのは、3Mとデュポンの2社です。3Mは1902年創業で、ミネソタ州コテージグローブに1947年に大規模な研究・生産拠点を開設し、ここでテフロンやスコッチガードの原材料となるPFASを製造していました。一方デュポンは1948年、ウェストバージニア州パーカーズバーグにワシントン・ワークス工場を設立し、以降多くのテフロン製品を生産しました。
30数年の間でPFASとそれを合成・製造する企業は多国籍製造業で不可欠な存在となり、グローバルサプライチェーンにも深く組み込まれていきました。しかし、こうした画期的化合物が製品の耐久性・多用途性を押し上げる一方で、実は長い半減期を持つため地球環境全体に静かに拡散し、大気・水・土壌・人体にまで及ぶことになるのです。このような長期・慢性的な浸透が、やがて人類の健康や環境に重大な影響を与えることになりました。
フォーエバーケミカルの初期の世間認知
20世紀の大部分、PFASの台頭と「化学の世紀」と呼ばれる時代の到来時、多くの消費者はPFASが有害だとは気付いていませんでした。むしろ、これらは世界中の人々の暮らしを直接向上させる革新的科学として賞賛されていました。実際、世間の認識は肯定的で単純なものでした。しかし、その裏側でははるかに陰惨で複雑な現実が隠されていました。
フォーエバーケミカルの影響把握・広範な化学物質曝露の発見
1970年代には既に3M内でPFASがヒトの血液中に蓄積していることに気付いていました。同社の動物実験でも有害性が確認されています。1970年に米国環境保護庁(EPA)が設立されましたが、3Mとデュポンはこうした社内調査結果を数十年にわたり公表しませんでした。PFASの有毒性が広く知られ、規制が課されるまでには長い年月がかかることになりました。

1999年、2つの事件が事態を大きく動かしました。まず全国調査により、EPAが米国人口の98%の血清サンプルからPFASを検出。これは「広範な化学物質曝露」を強く示唆するものでした。さらに、ウェストバージニア州パーカーズバーグの農家がデュポンの有害廃棄物処理が多数の家畜死に関係しているとして提訴。裁判の過程でデュポンが数千トンのPFAS廃棄物を現地埋立地に投棄していたことが明らかになり、この有毒廃棄物による水源汚染は8万人以上に及びました(この裁判は映画『ダーク・ウォーターズ』にもなっています)。
PFOAステュワードシップ・プログラムの発足
こうした発覚により、徐々に社会的な見直しが進みました。50年間にわたりPFASの製造で利益を上げてきたデュポンと3Mは、ついにEPAや世論の批判に直面することとなります。2000年、3MはPFOAおよびPFOS(最も一般的なフォーエバーケミカル)の製造終了を発表。その背景には、フォーエバーケミカルの影響について自社内で認識が高まっていたことがうかがえます。実際、その後10年で3Mが保有する廃棄場から地下水や地元魚類へのPFAS汚染が発覚しました。
そして2006年、EPAはPFOAステュワードシップ・プログラムを開始。デュポンや3Mなど世界の8社が2015年までにPFOAやその他のロングチェーンPFASの生産を完全廃止することで合意しました。2021年の論文では「これら物質の段階的廃止によって2000〜2015年にPFOS・PFOAの血清濃度が減少した」と報告されています。
業界対応:ショートチェーン化学物質への転換
しかし、PFOAステュワードシップ・プログラムによってPFASの終焉が訪れたわけではありません。代わりに、業界全体でロングチェーンからショートチェーンへの代替が進みました。一般に、ロングチェーンPFASは炭素分子数が7個以上(カーボンバックボーン)、ショートチェーンは6個以下です。
デュポンや3Mなど主要メーカーは、ショートチェーンPFASはロングチェーンよりも安全性・低毒性であると主張してきました。しかし近年の研究はこれに疑問を投げかけています。ショートチェーンPFASの本当の影響解明には時間がかかるため、実害が発覚した時点ではすでに大きなダメージが生じている可能性もあります。
PFAS汚染の健康・生態学的観点からの検証
たとえば、PFOAやPFOSなどロングチェーンPFASの段階的廃止の経緯は明確ですが、実際の健康・生態系への影響は非常に複雑です。出発点となるのは曝露経路——PFASがどのようにして人体や野生動物に取り込まれ蓄積されるのか、という点です。
PFASの環境中経路:飲料水の事例
最も有名な曝露経路のひとつが飲料水です。1999年、デュポンのPFAS廃棄によりオハイオ川および周辺8万人の水道が汚染された件でPFAS問題に注目が集まりました。その後のEPA調査では、全米数百万人分の水道水で勧告値を超えるPFAS濃度が見つかっています。米NPO環境ワーキング・グループは、50州・1,900万人に及ぶ水道インフラの汚染追跡マップも公開しています。

汚染水は大きな注目を集めますが、最も支配的な曝露経路は家庭用品・特に食品包装です。ファストフードチェーンの食品容器にはPFASが油分防止目的で活用されており、包装からサンドイッチやハンバーガー、フライドポテト、サラダなどへ化学物質が移行します。一部のファストフードチェーンはPFAS廃止を宣言していますが、最近の調査でも業界全体で広く使用されていることが判明しています。
また、PFASは土壌から地下水や河川にすばやく移動するため、淡水魚にも非常に多く含まれています。最新の研究によれば、淡水魚の一食分の摂取で、PFAS汚染水を1ヶ月飲むのと同等のリスクがあるとの結果も出ています。
フォーエバーケミカルの人体への影響
こうした物質は、水・食物・空気を通じて何十年もかけて私たちの生活に入り込みました。そして21世紀初頭には、米国人口の大半が一定量のPFASを血中に有していたのです。ここで重要な2つの疑問が生まれます。これらの化学物質は人体に有害なのか?もしそうなら、どのような作用によるのか?
PFAS曝露による健康被害を扱うには、C8健康プロジェクトの調査から見ていきましょう。これはデュポンによる水源汚染に対する集団訴訟和解を受けて約7万人を対象とした大規模疫学調査で、参加者の血中PFAS濃度は過去観測人口の5倍、PFAS曝露と6つの疾患(甲状腺・精巣・腎臓のがん、妊娠高血圧など)との関連性も明らかになりました。
C8プロジェクト以降、さらなる研究でPFASの内分泌かく乱、ホルモン異常、免疫抑制、生殖機能低下、高コレステロールなど複数の健康被害が確立されてきました。過去20年以上にわたる膨大な研究により、PFASが多様な形で人体に有害であることは否定できない事実となっています。
PFASが環境・野生生物に及ぼす影響
フォーエバーケミカルの野生生物への影響に関する研究は十分とは言えませんが、世界で330種以上の哺乳類・鳥類・魚類・爬虫類にPFASが確認されています。特に、ボトルノーズイルカ、ラッコの免疫系や、ホッキョクグマの脳・生殖機能・ホルモンへの影響が報告されています。

PFASは地下水・河川・海洋生態系へ広く拡散するため、特に海洋生態系では問題視されています。化学工場・排水処理施設付近でPFAS濃度が特に高いものの、その極端な持続性と移動性から地球の果てにまで拡散しています。現在までに、水鳥・二枚貝・魚類の生殖健康や免疫機能を脅かし、無脊椎動物や藻類にも高い毒性を示すことが判明しています。濃度が高まると「藻類バイオマス減少・慢性毒性リスク増加」と指摘されており(Seaside Sustainability)、藻類バイオマスの極端な減少は生態系全体に波及しかねません。現時点の研究でも、その害については氷山の一角である可能性があります。
PFAS規制の政策的進展の遅さ
PFASは1940年代から使用されていましたが、EPAが人体へのリスクを本格的に問題視しはじめたのは1990年代末です。1999年の調査(全米人口の98%がPFASを血中に持ち、デュポンの水源汚染が発覚)以後、EPAはより積極的に規制措置を取るようになりました。
2002年12月、EPAは重要新用途規則(SNUR)を発表し、化学メーカーに対し75種類のPFASの新たな製造・使用時には事前通知を義務付けました。これは全面禁止ではないものの、極めて限定的な用途のみに制限するものでした(EPAいわく「他に代替品が存在しない高度技術用途のみに継続利用を認める」)。今後15年間、SNURは段階的に拡大されます。
さらに2006年、EPAは世界8大PFASメーカーと「ステュワードシップ・プログラム」を立ち上げ、2000年代~2010年代を通じてロングチェーンからショートチェーンへの転換を進めました。2016年には飲料水中のPFOS・PFOAについて暫定健康アドバイザリを発出し、両者の合計濃度が1兆分の70以下と設定。「すべてのアメリカ人の生涯を通じて健康被害から守るマージン」とされ、全米での水道水検査強化の契機となりました。
海外動向:国際PFAS規制
米国で規制強化が進む一方、国際社会でも「フォーエバーケミカル」規制が本格化しています。2009年、ストックホルム条約は、PAFSの中でもPFOSおよびPFOSF(パーフルオロオクタンスルホン酸およびスルフォニルフルオリド)を「残留性有機汚染物質(POPs)」リストに追加。これにより、150以上の加盟国において製造・使用が大幅に制限または廃止されました。2022年以降はPFOAやPFHxS(パーフルオロヘキサンスルホン酸)も追加され、欧州化学品庁(ECHA)など他の国際機関も一部のPFASの製造・使用を規制しています。
現在:バイデン政権とフォーエバーケミカル
2021年の発足以降、バイデン政権は歴代政権以上にPFAS問題へ踏み込んでいます。同年10月、EPAはPFAS戦略ロードマップを発表。徹底的な調査や毒性評価、新規PFASの環境流入防止、既存汚染のクリーンアップなどの方針が示されました。化学物質安全・汚染予防局も、既存PFASによる新たなリスク発生の防止や「レガシーPFAS」再生産阻止を担っています。
ショートチェーンPFASの実態
ロングチェーンPFASの危険性に関してはコンセンサスが広がった今、注目はショートチェーンPFASに移っています。化学業界は「ショートチェーンの方がはるかに安全」と主張してきましたが、英国NPOのCHEM Trustは2019年報告書で「代替PFASは『より安全』とされているが、環境・毒性データがほとんど不足している」と指摘。
その後わずか数年の間に、ショートチェーンPFASについても懸念材料となる研究が進みました。2020年にFDAが実施した2件の研究では、6:2 FTOH(代表的ショートチェーン化合物)の< a href="https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0041008X20300028?via%3Dihub">ラット体内での生体蓄積、< a href="https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0278691520300983?via%3Dihub">安全性主張の誤りなど、業界説明を覆す結果が得られています。これらにより、EPAなどの規制当局が今後どこまで介入強化すべきか議論が活発化しています。
サプライチェーンからフォーエバーケミカルを除去するために必要なこと
近年の豊富なエビデンスに基づき、多くの企業がフォーエバーケミカル規制へ積極的な対応を取り始めました。2020年以降、NPO・ChemSecは「コーポレートPFASムーブメント」を開始し、すでにH&M・Lacoste・New Balance・Ralph Laurenなど50社以上が加盟。強力かつ責任あるPFAS規制を支持、段階的にグローバルサプライチェーンからの排除を推進しています。
さらに2022年には、ChemSecが50超の機関投資家(運用資産11兆ドル超)と連携し、化学メーカーにPFAS製造中止を要求。これを受けて1ヶ月以内に3MはPFAS製造中止を発表し、「2025年末までに全製品でPFAS使用を廃止する」と表明しました。世界を代表する大手企業のこうした決断は、他の主要PFASメーカーにも大きな影響を及ぼす可能性があります。
フォーエバーケミカルの環境除去:課題の規模
健康リスクに関する認識が広まるなか、PFASの役割や存在感はこの10年で徐々に減少しています。しかし、環境弁護士ロブ・ビロットによれば「地球上ほぼ全ての人」の血液にPFASが含まれているのが現実です。今、自治体・政府・NPOなどが直面している最大の課題は、フォーエバーケミカルによる環境ダメージに対しクリーンアップをどこまで実施できるかという点にあります。
PFAS除去技術は限られており、成功も部分的です。特に実績があるのは「粒状活性炭(GAC)」法。石炭・木材・ココナッツ殻など高炭素含有原料から生成された活性炭を用いて水や土壌からPFASを吸着・除去する方法です。< a href="https://www.epa.gov/sciencematters/reducing-pfas-drinking-water-treatment-technologies">EPAによると、GACはロングチェーンPFAS(PFOA・PFOSなど)の除去に効果的ですが、ショートチェーンPFASの除去効率は高くありません。
バイデン政権は取り組みの一環として2023年2月に20億ドルの予算を州や領土の水質汚染対策支援に充てました。しかしその規模にもかかわらず、米国での汚染範囲の広さは対策が不十分であることを示しています。たとえばミネソタ公害対策局(MPCA)の試算では、州内汚水からPFASを除去する費用は140億〜280億ドルにも上ります。3Mの本拠地であるミネソタは全米水準の一例とは限らないものの、その莫大なコストは問題の深刻さを物語っています。
軍事基地でのフォーエバーケミカル
クリーンナップの難航に拍車をかけているのが、米国内数百の軍事基地の状況です。何十年にもわたるAFFF(特殊消火泡)の使用により、基地と周辺の飲料水システムはPFASで著しく汚染されています。< a href="https://www.ewg.org/news-insights/news-release/2023/05/pentagons-contamination-time-bomb-cleanup-backlog-outpaces">環境ワーキング・グループの調査によれば、50ヶ所のPFAS除去コストは300億ドルを超える見込みです。国防総省も多額の予算を投じていますが、全体の需要には遠く及びません。
こうした事例は、政府が環境・インフラからフォーエバーケミカルの排除を進めていることを示しています。とはいえ、汚染の規模・除去技術の高コストなどからこの取り組みは大きな困難を伴います。

サプライチェーンにおけるPFAS代替
60年以上にわたり多様な産業に広がってきたフォーエバーケミカルは、その多様な用途と浸透度の高さゆえに代替が非常に困難です。< a href="https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4421778/">2015年の研究でも「PFASの機能・性能を満たす代替品の確保は難しい」と記されています。さらに、ショートチェーンPFASへの一時的な転換は、必ずしもロングチェーンPFASと比べて大差ない有害性を持つ恐れもあり、真の解決策にはなりません。表面的な規制順守にとどまれば、抜本的な産業構造転換を妨げ全体の問題解決を長引かせる結果になります。
今後の期待材料としては、「化学物質代替評価(CAA)」の取り組みが挙げられます。これは州機関などが中心となり、多様な消費財分野でPFASの実現的な化学的・非化学的な代替品を探索・検証するものです。2021年にはワシントン州で< a href="https://apps.ecology.wa.gov/publications/documents/2104004.pdf">CAAが実施され、食品包装材4種の州内禁止にもつながっています。こうしたCAAは企業や消費者双方にとって実効的な代替策の提供に役立ちます。
短期的には、CAAが企業のフォーエバーケミカル脱却を支援する有効な手段となりますが、中長期的にはより厳格な規制が不可欠です。数十年にわたり人体と生態系を汚染してきたPFASから真に回復するためには、国内外の規制当局が全世代・あらゆるタイプのフォーエバーケミカルに対する実質的・永続的な全面禁止を実現することが求められます。